Nursery School in Takaido

高井戸の保育園 / Nursery School in Takaido
2019-2021

東京都杉並区、神田川へと下るなだらかな傾斜地の際、高度成長期につくられた住宅地の一角に新設された保育園。宅地2軒分を合わせた小さな敷地に遊び、学び、くつろぎ、楽しく過ごすことが出来る場を凝縮した。大屋根の下、立体的なネットの空間を中心に、落ち着いた窓辺の空間がぐるりと囲む。園庭は既存の擁壁を崩し、公園に連なる小さな丘のような斜面とした。求心性と広がりを同居させることで多様な遊びを引き出し、受け止める場をつくった。

The nursery school stands on a corner of a housing estate that was built on a hillside during the high-growth period, on a gentle slope down to the Kanda River. The site area is the size of two residential plots combined, which is extremely small for a facility with a capacity of 60 children. On the other hand, the surrounding area is green and adjacent to chestnut fields and a park. In order to make the most of the good qualities of the surrounding environment, an open and compact school building was designed with nursery rooms surrounding a stairwell in the middle of the building. The playground was designed as a small hill-like slope linked to the park by breaking down an existing retaining wall. To compensate for the narrowness of the playground, a three-dimensional playground was built indoors.

東京都杉並区、神田川へと下るなだらかな傾斜地の際、高度成長期につくられた住宅地の一角に新設された保育園。敷地面積は宅地2軒分を合わせた広さで、60名定員の施設としては極小である。この小さな敷地に遊び、学び、くつろぎ、楽しく過ごすことが出来る場を凝縮した。

敷地の周辺は緑が多く、栗畑や公園、児童館に隣接していることから、周辺環境と繋がった開放性の高い園舎、園庭とすると共に、地域の緑のネットワークを高めることを考えた。

園舎は規定の園庭面積を満たす為にコンパクトにまとめた。大屋根の下、階段吹抜けの立体的なネットの空間を中心に平らな床でぐるりと囲んだ。全体の平面形は敷地形状に合わせて変形させた為、大屋根は緩やかに湾曲し、高窓からの明かりと共に保育室を包んでいる。四隅の開口は周囲の緑を広く望むと共に、落ち着いて遊びこめる窓辺の場をもたらす。吹抜け下部は床が掘り込まれた絵本コーナーとし、帰宅前に親子で過ごす場にもなっている。求心性と広がりを同居させ、各部を結び合わせることで多様な遊びを引き出し、受け止める環境をつくった。

園庭はひな壇造成の擁壁を崩し、斜面を取り戻して公園と緩やかに繋げた。また、組立式プールを設置する平場を残した上で築山と遊具を加えることで、立体的な回遊性を持たせた。高低差は全体で2.8mに及び、小さいながらも多様な場を織り込むことで、自ずと体を動かしたくなるような園庭となった。

構造については、傘のように中央の柱と屋根面で安定した方形の屋根架構、木梁を鉄骨架構の中に配置して構成した2階床架構によって、軽量で合理的な構成となっている。更に、四辺にバランス良くブレース構面を設け、コーナー部分は細径(60.5φ)のポスト柱としてメリハリをつけることで開放的な空間を実現した。

都市、及び近郊の保育園は静かな環境を望む地域住民への配慮、園児のプライバシーへの配慮が相まって閉鎖性が高まっている。周囲からは園児の様子が全く見えないことも多い。そのような中で、自然と園児の姿が街へ現れる保育園になった。園児は芝生の丘を下り、お散歩に出かける。午後には放課後の児童が公園に集まる。園庭に植えられた枝垂桜や源平桃の花は公園の背景に彩りを与え、春を楽しみにしている近隣の方も多い。緑に囲まれる中、子どもたちの声が絶えない新たな街の風景が生まれた。

施設名:ヴィラまなびの森保育園高井戸
所在地:東京都
用途:保育所
構造:鉄骨造
建築面積: 207.73m2
延床面積: 395.26m2
園児定員: 60名

設計監理: 秋山隆浩建築設計事務所 + 磯田和明
構造設計: 浜田英明建築構造設計
設備設計: 環境エンジニアリング
施工: 初雁工業
遊具: 中村製作所

撮影: 石田篤(一部、秋山隆浩建築設計事務所)